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企業関係者にとって、地球温暖化問題は、できれば直視したくない話題に違いない。
たしかに自分たちの活動が致命的な悪影響を与えていることを進んで認めたい人は少ないだろう。
地球が温暖化していること自体を認めない立場、地球が温暖化しているとしてもその主たる理由が人為的活動であることを認めない立場の人がいるのも、そうした意識の反映かもしれない。
さらに、人為的活動を原因にした地球温暖化問題を是認したとしても、その責任を企業に求めるのではなく、人々の生活そのものに求める立場もよく目にする。
人々が賛沢と便利さを追求することの代償だという意見だ。
ともかく技術の革新に活路を見出すしかないという主張もある。
日本には、二度のオイルショックを克服してきた卓越した省エネ技術があるという自負を多くの人々が有している。
ただ、そうした向き合い方を「危険だな」と感じることがたびたびある。
先進的な企業は、「地球温暖化問題という避けられない現実のなかにいること」「企業が一定の制約を受けることは不可避なこと」を前提に「新しいルールのもとで、少しでも有利な位置を占めること」を目指してアクションを開始している。
「できれば直視したくない」という意識のままでいると、ますます差がついてしまう。
とりわけ日本国内にいると、地球温暖化の影響とみられる目に見える脅威を感じにくい。
このため企業関係者の多くが、目の前にある予算達成や組織変更などの事案に比べ、地球温暖化問題に関して意思決定を行う切迫感を感じられずにいるのではないだろうか。
仮定に仮定を重ねる話に忍耐強く付き合っている暇はないという声も聞く。
ただ「もし」の中身を吟味して、対応策を想定しておくのと、「もし」が現実になってから考えるのとでは、事後に決定的な差がつく。
企業の優れた取組みとしてよく引合いに出されるのが、石油会社ロイヤル・ダッチ・シェルのシナリオ・プランニングである。
オイルショックが現実のものとなったとき、事前に対応準備を整えていた同社は、すばやい意思決定で石油メジャーのなかの地位を劇的に上昇させた。
しかし、同社はオイルショックの到来を予測できたわけではない。
複数の代替案を前提に、「もし」の中身と影響を考え抜いていたからこそ的確な対応がとれた。
どんな事態が起こりうるかを根拠に、最も賢明な選択をしていく。
そうした知恵が現在ほど必要とされている時代はない。
地球環境問題が企業競争力を左右することになるという立場に立ちながら、第1部では、将来、国家単位ばかりでなく企業や個人までもが「温室効果ガスをこれ以上は排出量できませんよ」と制約を受ける時代が来ることを展望した。
それを前提に企業戦略を構想していく潮流を紹介した。
最後に第V部では、個別の業種ごとに、先進的な企業がどのようなアクションを開始しているのか、伸びるビジネスとして何が出現しているのかを紹介した。
執筆にあたった株式会社日本総合研究所の研究員は、日頃、地球環境問題の調査研究に携わりながら、その問題の大きさにたじろぐことも多い。
しかし、異なる意見が錯綜する状況のなかで、それを比較し、評価し、取捨選択して、社会の合意を形成する努力を諦めてはならないこともまた、痛感している。
地球温暖化という環境問題に対して、政財界でも一般世論でも非常に高い関心が寄せられている。
温暖化がたしかに起こっていること、そしてその原因が二酸化炭素(CO2)を中心とする温室効果ガス(GHG)濃度増加によるものであることについて、2007年のIPCC第4次評価報告書のなかで、従来よりも踏み込んだ表現で報告された。
しかしながら、それでも温暖化の原因を人間活動による温室効果ガス濃度増大に求めることに異議を唱える学者がいないわけではない。
温暖化の原因が何かということは、政策や企業の意思決定に大きな影響を与えるため、慎重な議論が展開されてきた。
もしCO2が温暖化の原因でないのであれば、CO2を減らす努力をしても温暖化対策には無駄になってしまうからである。
本章では、IPCCの報告を中心に、地球温暖化の進行状況、その原因をめぐる諸説、そして温暖化の影響について説明する。
地球温暖化はたしかに進行しているのかどうか?20世紀の100年間で、日本の平均気温は約1℃上昇した。
2005年8月に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナに象徴されるように、異常気象も多い。
たしかに地球温暖化は進行しているように見受けられるが、気候変動を論じる際には、より長期の時間間隔、そして全地球規模的な視点で状況を見ていく必要がある。
過去数百万年、地球は約10万年の間隔で氷期(氷河期のなかで寒い時期)と間氷期(氷河期のなかで暖かい時期)を繰り返しているという)。
そして、最近の氷期は約1万2000年前に終わり、現代は間氷期の時代にあるという説が有力になっている。
さらに昔、恐竜が栄えたジュラ紀(いまから約2億1000万年前〜約1億4000万年前まで)のCO2濃度の最大値は約2500ppm(ppmは100万分の1を示す。
2500ppmは0.25%に相当)で現在の約7倍程度、そして海面の高さは現在より125m高かったという。
ジュラ紀の平均気温は約25℃で、現在よりも10℃近くも高かったと推測されている。
人類が誕生する遥か前からの長い地球の歴史から考えれば、地球の温度が大きく高低することは珍しくない。
しかしながら現在問題になっているのは、ここ最近の温度やCO2濃度の変化が、地球的な時間間隔からすると急すぎることにある。
IPCCは、2007年11月の「第4次評価報告」正式発表に向けて作業を行っているが、2007年2月、IPCCの第1作業部会が作成した「物理科学的根拠」の一部分を公表した。
そのIPCC第4次評価報告書で示された、観測から得られた世界平均気温、海面水位、および北半球の積雪面積の変化である。
近年、暑いと感じるのは日本だけではない。
1995〜2006年の12年のうち11年の世界平均気温は、測定器による観測が始まってから1850年以降で最も温暖な年の12位にランク入りしている。
気温上昇に伴い海水も熱で膨張し、さらに氷河の後退も相まって海水面の上昇が生じている。
IPCCは、気候システムの温暖化には疑う余地がないと断言し、20世紀後半の北半球の平均気温は、過去500年間のうちのどの50年よりも高かった可能性がかなり高く、少なくとも過去1300年間のうちでも最も高温であった可能性が高いと述べている。
IPCCは、先の第4次評価報告書のなかで、近年の温暖化は人為的な温室効果ガスの排出により起こっていることを、「可能性がきわめて高い」(確度90%)というかつてない強い表現で表明した。
この温室効果ガスによる温暖化のメカニズムとは、簡単に説明すると以下のとおりである。
太陽から届く日射エネルギーの約7割は、大気と地表面に吸収されて熱に変わるが、地表面から放出される熱(赤外線)の多くは大気圏外に放出され、一部は大気中の温室効果ガスに吸収される。
人間活動により大気中の温室効果ガスの濃度が上昇すると、大気圏内に吸収される熱の量が増え、地球の気温も上昇してしまうというものである。
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